[グッド・ヴァイブレーション~渡辺香津美のドガタナ・ワールド]民放FM,1984年7月21日
<温故知新シリーズ/サックス編>
僕は男性だから?(笑)
○マンハッタン・フルダンス 「トチカ」より
渡辺香津美
○インティメイト 「インティメイト」より
井上敬三
○ノー・モア・ブルース 「ライブ・アット・ジャンク」より
渡辺貞夫
○ブリッジ
ソニー・ロリンズ sax、ジム・ホール g
○セイ・モー・チック・チック
ラリー・コリエル g、アーニー・ローレンス sax
○オフコース・オフコース
チャールズ・ロイド fl、ガボール・ザボ g
○テーマ・フロム・キャプテン・ブラック
ジェームス・ブラッドウルマー、オーネット・コールマン
○カリビアン・ファイア・ダンス
ジョン・ヘンダーソン
○スーパー・ノヴァ
ウェイン・ショーター
○エイプリル・イン・パリ
チャーリー・パーカー
温故知新のサックス編です。
僕はもともとサックスという楽器は好きじゃなかったんですけど、プリズムの曲を聞いてからだんだん好きになってきました。
渡辺:えー、女性を相手にしたアンケートで「あなたが一番好きな楽器、そして聴いていてグッとくる楽器は何か?」と質問しますと、返ってきた答えの第一位というのが必ずサックスになるわけですね。まぁあのー、ギタリストとしては非常に悔しい気もしますけども、まぁ、何故サックスがその女性にもてるのか?そんな理由を考えてみたいんですけども、まぁ、アルト・サックス、それからテナー・サックス。ソプラノ、バリトン、いろいろありますけどもね。えー、昔から、むせび泣くテナー、なんて言うふうに言われたりしまして、そのー、音色なんかの、こう何て言うか、人間の声に一番近い囁きみたいな、感じがね。ギターなんかでもそういう雰囲気が出るとなかなか良いと思うんですけども。そういうのが一つの原因になってる他に、なんか楽器自体の形状なんかもあるんじゃないかと思いますが。
僕が男性だからサックスを嫌いだったと言える、ということはないんでしょうけど(笑)、女性がサックスを好きだという話は聞いたことがなかったです。
渡辺貞夫さんの曲はライブ盤からですが、香津美さんはそのライブを客席の一番前にお客として見ていたそうです。
香津美さんがサックスについて語ってくれています。
渡辺:えー、さて、サックスと一口に言っても、始めに言いましたようにアルト、テナー、ソプラノ、バリトンなどいろいろな種類が音域によってあるんですけれども、そのサックス全般って言ったものとギターの相性はいったいどうなんのかと。その辺を僕の体験も交えて鋭く探っていきたいと思います。
そもそも、とくにジャズと限定した場合ですけども、ギターの位置というのが、非常にこうギターの位置と言うかね、性格という、音楽の中での性格というのが甚だ宙ぶらりんなものがあるんじゃないかと僕は思いまして、またそこはなかなかその良さでもあるとは思いますけれども、大雑把に分けて3つのタイプにその演奏の傾向というか、方針から分けることができると思います。
まず一つは、ギターというものが非常にギターらしい。ギターの良さも悪さも出した面でのとにかくギターらしいギターという方向で演奏する場合。
それからギターがいわゆるハーモニーとか音楽のバックグラウンドというか、そういうものを作る女房役の方に廻ってですね、どちらかと言うとキーボード、ピアノ的な形で演奏する場合。
それから第三の形というのが、これがあのー、主にジャズ・ギタリスト奏者がやるんですけれども、単音を使ってソロを取る場合ですよね。そういう場合、やはりなんかサックスのフレージングであるとか、そういうものをかなり意識して弾く場合が多いようで、こういった場合になるとですね、やはりサックスとギターというものがかなりぶつかり合うものが多いんじゃないかと思います。
で、第二の場合、あるいは最初の場合のようにサックスに対してギターが女房役というか、そういう形で対応したりとかする場合は非常に良いコンビネーションができると思うんですけども。
ある時期に非常にギタリストにとっては困ったことが起こりました。これがですね、巨匠の出現なんですけども、巨匠の出現と言っても前からいらっしゃったわけですが、ジャズ界に打ち立てた名誉の殿堂、かなりしつこいですけども、その人、ジョン・コルトレーン大先生がいるわけですね。で、コルトレーンという人はジャズ界に打ち立てたその業績というのは計り知れない、私め渡辺などには及びも知らないような鋭い深いものがあるとは思うんですけれども、このジョン・コルトレーン先生が勉強の友にしていましたマッコイ・タイナーというピアニストのやはり巨匠がおりまして、この二人組のコンビネーションというのが甚だ静寂(←?)するというか、コルトレーンと言えばタイナー、サックスと言えばピアノというこの金字塔がですね、というか図式ができてしまったので、この時期、私のようなギタリストにとってはサックスのリーダーのバンドに入るということは本当に稀なことですね。あのー、これはやっぱりあれですね。やっぱり困ったもんでしたけどね。
まぁそうこうしているうちにギターがまた違う分野の方から盛り返してきたなんてこともあるんですけども、僕自身いろいろ演奏しながらピアノレスのバンドでやる機会なんかも多かったので、サックスに対するギターの役割というのがかなり重要に考えて、いろいろどういうような形でサポートしたりとか、コントラストを付けたら良いかってこともいろいろ研究、勉強、研鑚を重ねてきたわけですけども、その途中にいろいろ参考にしたレコードが随分あります。
ということで、ギター奏者とサックス奏者のレコードからと香津美さんが参考にしたサックス奏者のレコードからの曲が番組でかけられました。
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