[グッド・ヴァイブレーション~渡辺香津美のドガタナ・ワールド]
<松岡直也を迎えて>民放FM1983年3月12日
続きです。


渡辺:あのー、音楽をね、始められた切っ掛けっていうか、そういうようなことを聞きたいんですけども。一番最初の楽器は何、ピアノだったわけですか?
松岡:一番最初はやっぱりピアノだね、うん。
渡辺:それは、
松岡:あっ、ピアノ? そうだね、ピアノだね、うん。
いじくった楽器はあんだけど全然ものになんなくて。バイオリンをいじくったけど。
渡辺:あぁ。
松岡:やっぱりキーキーキーキー言うんでね。(笑)
渡辺:うるさいって。
松岡:とにかくものになりそうもないな。やっぱりピアノね。
渡辺:ピアノっていうのはいわゆるこう、
松岡:誰でも弾けそうですよ。
渡辺:クラシックっていうか。
松岡:あっ、それね、一切やってないんだよね。
渡辺:あぁ、じゃあ、バイエルとかそういうんじゃなくて。
松岡:バイエルも、やってない、っていうかね。
渡辺:そしたらなんか、御兄弟の方とか?
松岡:あぁ、うちのね、あのー、僕の姉はちょっとクラシックやってたけど。
渡辺: ピアノがあったっていう。
松岡:うん、うちにはあったのね。
渡辺:それをこうなんかいたずらしてたっていうか。
松岡:そうそうそう。それであのー、ちょっと、まぁ古い話になるけど、終戦後すぐなんだけど。
う~ん、いわゆる駐留軍の、あのー、なんかねこう音楽が好きな奴がいてね。で、うちー、とにかくジャム・セッションみたいのを、ジャム・セッションって言うのかなぁやっぱり。そういうのやりたがるわけよね。
渡辺:ピアノとかそういう楽器があるところに集まってくるわけですね。
松岡:うん、家に楽器が全部あったからね。
渡辺:どういうとこでそれ調べてるんでしょうね。
松岡:それで、なんか集まってくるわけよね。それを誰に たんだろう。それでまぁやると結構くっだらねぇ歌とか、まぁ とかね。そういうのをやって、まぁジャズなんかやるんだけど、やってたんだけど、まぁそれがきっかけでなんかピアノをいじるっていう、ことになってね。
渡辺:それはおいくつくらいの時ですか?
松岡:だから、九つの時かなぁ。
渡辺:九つ。あっ、 九つくらいの時になんか知んないけど、
松岡:なんとなく。
渡辺:外人とかなんか集まってきてね、チャッチャッチャッとかって、
松岡:そうそうそうそう。
渡辺:そんなかでやってたのは、こう、いわゆるなんて言うか、ラテン音楽とのなんか出会いみたいなのは。
松岡:そんなかには全然ない。
渡辺:全然ないですか。
松岡:で、そのー、ラテン音楽との出会いっていうは、やっぱり15歳の時で、もうすでに横浜に来てて。それであのー、ジャズ喫茶、っていうかまぁ喫茶店ですよね。そのね、レコードを聞かせる。そこで、あのー、ノロ・モラレスの、えー、ピアノが聞こえたわけね。
渡辺:えぇ。で、それを聞いてこう、なんか。
松岡:うん、すると目が輝いて、あぁこのリズムとこのピアノは良いなぁ、てなもんでね。(笑)
それで、あのー、横浜にも当時、あのージャム・セッション、日本、ミュージシャンがね、ずいぶんジャム・セッションなんかやってたわけ。モガンボとか、あったしね、うん。だけど、今一歩ちょっと僕には難しすぎてね。ちょっと分かんなかったけど。
渡辺:そのころ、こう、そういうなんて言うか、情報っていうか、レコード。もちろんなんというかジャズみたいなそういう理論みたいなやつとか、本みたいなやつはほとんどないわけでしょう?
松岡:あんまりないみたいね。
渡辺:レコードとか。
松岡:うん。
渡辺:ラジオなんて。
松岡:うん。
それで、まぁちょっとジャズは難しいなぁ、っていうとこから、自分に合った音楽ってのはやっぱりラテンかなぁ、ていうね。
渡辺:リズムの面白さがありますよね。
松岡:やっぱりリズムの面白さだね。
渡辺:パーカッションなんかもね、すごい松岡さんプレイなさるでしょ。
松岡:うーん、そうね。だんだんまぁやらなくなったんだけど。まぁ、最初はね、パーカッションやってたけど。まぁ、やっぱりラテンは良いなぁって。
渡辺:それで、なんて言うのかなぁ、あのー、たとえこうジャズなんかと違ってね、そういうパターンをプレイするだけじゃなくて、グループのアンサンブルがね、を作ったりとか構成とかしなきゃいけないから必然的にそのーアレンジ的なことをね、要求されるわけでしょ。
松岡:そうなのね。だから、どうしてもだんだんこうラテン聞いていくうちに自分でやっぱりラテン・バンド持ちたいなってね。だんだん編成増やしていくと自然的にあのー、譜面をね、楽譜方(法?)っていうのを覚えないと、なんない。それはまぁ結局学校はないし、まぁ、本やなんかがね、あってクラシックの本買ったり、それから、あとはまぁジャズのミュージシャンが、家がアパートやってたんでね。
渡辺:あぁ、そうなんですか。
松岡:結構泊ってたの。うん、それで、コードやなんか教わったりしてね。
渡辺:じゃあもう実際にもうアレンジして、それでそれをこう、音になった時から実践的に、とりあえずやっちゃったっていう。
僕、松岡さんの、最初お会いした時に、あのー、遊びでね、譜面をね、見してもらったんです。あれ、すごいきれいな、ですねぇ。
松岡:あっ、そう。あれは自分でね。みんな
渡辺:なんか印刷したみたいに。
松岡:そうかねぇ。
渡辺:定規かなんか使って、こう…。
松岡:いやいや。定規なんか使わない。
渡辺:使わないですか。
松岡:あっ、そんなのよく覚えてるねぇ。
渡辺:なんかねぇ、あのー、縦に線ひいてね。こう四分音符とか"たま"書いていくでしょう?すると必ず下にずれていくんですよ。ちょっとよれたりとか。
松岡:ずれちゃうわけ。
渡辺:まっすぐにやってて、
松岡:なんか性格というか、別に線引きなんか一切使わないんだけどね、僕は。
渡辺:僕も几帳面でね、自分でわりと譜面きれいに凝って、定規使って書くつもりなのにね。いやぁ、これには参りましたって。
あれから、
松岡:そうかなぁ。
渡辺:あれからね、ひどくショックを受けまして、
松岡:あっそう。
渡辺:ちゃんと定規使ってね、きれいに書くようにしてたんですよ。
松岡:あれはねぇ、定規は使ってないんですよね。
渡辺:使ってないんですか。いやぁそれは驚きました。
それじゃあもう一曲いきたいと思います。同じLPから、えー、ミラージュ。
○ミラージュ
○ユー・ニード・ア・ヒーロー
ペイジズ
渡辺:えー、このコーナーでは松岡さんに持ってきていただいたレコードをかけながらいろんなことを話してみたいと思いますけども。
これ、最初の曲は「ユー・ニード・ア・ヒーロー」というタイトル。
松岡:うん。
渡辺:ペイジズ?
松岡:ペイジズ。
渡辺:これはどういうグループですか?
松岡:そうねぇ、あのー、スティーブ・ジョージのキーボード。ペイジズ、リチャード・ペイジズ。まぁ、あのー、ギターもできるし、大体リード・ボーカルなんですね、このアルバムの。で、まぁ、ジェイ・グレイドンとスティーブ・ジョージのプロデュースのレコードなんだけども。で、ちょっとポップス志向で、まぁロックであり、プログレの展開もあるしね。非常に、それでいて暖かいところがあるから、 僕好きなんですね。
渡辺:こういう感じのレコードっていうか音楽、松岡さんよくお聞きになったりするんですか?
松岡:いや、ぜんぜん聞かないんだけど、たまたまね、耳に入ってきて、あぁ良いなぁっていう、それだけなんだ。
渡辺:
松岡:それでこれを「買った」っつってね。これがね、そんな程度なんだけど。
渡辺:今さっきもちょっと話したんですけども、そのー、いわゆるアレンジャーってね、こう、新しいレコードが出るとすぐパーっとレコード屋さんに注文しててね、買ってきて全部聞いて、全部サウンドをチェックして、
松岡:熱心だね。熱心な人いるんだけど、それが僕なんか少しはそういうの見習えば良いんだけど、全然それをやらないんだね。
渡辺:松岡さんの、こうね、アレンジ、私、聞くと松岡さんだとすぐ分かるんですね。メロディーとか。
松岡:あっ、そう。ふ~ん。
渡辺:最近よくテレビのCMなんかね。チラッとでも流れると、「あっ松岡さん」っていって分かるんですよ。すごい暖かいっていうか。
松岡:まぁ、あんまり熱心にやってなくてね、分かってもらえるというのはうれしいけど。
渡辺:そのー、作曲とかアレンジなんかされるとき、やっぱりピアノを使ってですか?
松岡:そうだね、やっぱり、ピアノ、だね。
渡辺:僕はね、どうしてもなんか細かく決めるときはピアノなんですけどね。そのー、ハーモニーの動くアイデアとかね、やろうと思ったらどうしてもピアノよりギターのほうが先行して
松岡:あぁ、やっぱりね。
渡辺:そっちのほうで、いわゆるキーボードじゃなくて、スレット(フレット?)のなんかニュアンスで、あっ、ここ転調したいな、とかね。
松岡:うーん。
渡辺:なんとなく良いな、みたいで。で、あとでそれを細かくボイシングみたいなのね、 的に、ギターだとできないから。
松岡:あぁ、なるほどね。
渡辺: 。ピアノってのはそういう点で便利だなと思ってるんですよ。
松岡:ほんと、便利だね、ピアノっていうのは。
渡辺:音が見えるっていうか。
松岡:うん、見えるからね。
渡辺:えー、ペイジズをもう少し聞いてみたいと思います。
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